西日本のとある街で、
スポーツ系の施設事業を営む
50代の男性経営者の
ご相談に乗りました。

わざわざ、
ワタシのセミナーを聴くために、
二時間以上の移動距離を経て、
一泊宿泊して、
翌日の個別相談に
臨んでくださった方。Nさんです。

もともとその事業所に勤務していたNさん。

勤務先が、
そのエリアから撤退する事を受けて、
Nさんが会社を設立し、
その事業を引き継ぐ形で事業が承継されました。

Nさんのお人柄もあり、
商業施設が置かれている土地の
地主さんからも支援を受ける、
という形でその土地を担保に融資を受け、
事業が進行されたことについても、
穏やかな語り口のNさんと話していまして、
驚きはしませんでした。

数年事業を
商ってきたところだったんですが、
しばらくして業績が低迷。

2億円弱の年商と、
ほぼ同額の負債を抱えるように
なってしまいました。

借入金額の大きさもあり、
銀行への借入金返済についても、
リスケジュールをしてはいるものの、
月額の元利返済は100万円以上。

銀行への返済原資を生むために、
地主さんへの家賃を減額し、
近隣に数年前に建てた
自宅についてもローンの支払いを
リスケジュールを実行していました。

また、個人でカードローンや
クレジットなどでも借入を起こしては
返済原資に充当している日々。

ワタシに相談する口調は
穏やかではありましたが、
Nさんの表情には大きな疲労が
滲み出ていました。

Nさんは50代とは言え、
お子さんはまだ中学生と小学生。

手もかかるしお金もかかる。
Nさんはご自身や家族の将来に
大きな不安を抱えていました。

ワタシの方で、いくつか提案しました。

・銀行への返済停止

・返済停止に伴う、
自宅差し押さえ後の対応策

・返済停止に伴う、
事業所差し押さえ後の対応策

・返済停止に伴う、
口座差し押さえやその他差し押さえに
対する対応策

「Nさん、これをやって
毎月100万円以上の返済をゼロにして、
資金を内部に留保させましょう。

その資金で不動産の
買戻しなどにつかいましょう。

無理して買い戻す必要もありません。

新しい地主さんに賃借して
事業を継続する手段もあります。

その後の対応策については、
昨晩のセミナーで説明しましたから
概略は解っていらっしゃるでしょう?

いずれにしても事業を継続しながら
資金繰りの迅速な改善が可能です。」

こんなところをアドバイスしました。

Nさん・・・・
一時的に明るい表情を見せましたが、
数分後にまた、
思い出したように暗い表情に戻りました。

「今まで懇意に付き合ってくれて、
地代についても対応してくれた
地主さんに申し訳が立たない。」

とNさん。

いかにもNさんの人柄を
象徴した発言だと思いました。

ワタシから意見を申し上げました。

「Nさん、懇意にしてくれていた
地主さんを守るとか言っていながら、
銀行へ利息の支払いを優先させて、
地主さんの地代を値引きしている事について、
あなたは良心の呵責は無いのですか?

銀行への利息払いを
今後継続しても銀行は、
NさんやNさんの事業に対して融資はしません。

でも、地主さんは地代の支払いを継続したら、
事業を展開し続けられる環境は出来ます。

Nさんにとって必要なのは銀行なのか?
地主さんなのか?・・・よ~く考えて下さい。

銀行に2億円近い借入金が
返済出来なくても、
銀行はつぶれません。絶対に。

地主さんに今後の家賃が
支払できなくなったら、
家主さんの生活は大きなダメージを受けます。

カネを貸してくれない
そっぽを向いた銀行と、
今まで懇意にしてくれた地主さんと・・・・
どちらがあなたにとって
優先順位が高いのですか?」

Nさんは言います。

「たちばなさん、
言う事は良く理解できます。
でも地主さんは高齢です。

一度でも差し押さえがされてしまう事で、
人間関係が破たんしてしまいます。

ワタシはそれに強い危機感や
恐怖心を憶えるのです。」

ワタシは再度話します。

「Nさんの言う事もワタシは
理解していますよ。よ~く理解できます。

でもね・・・・じゃあ、
我々の提案を受け入れなかったら、
Nさんや地主さんは助かるのですか?

このまま無策で事業を続け、
返済を続け、
資金が痩せてスッテンテンになって・・・・。

そうして事業所が差し押さえになって、
買い戻す資金もなく、
事業が続けられなくなって・・・・
あなたは必ずそうなりますよ。

このまま無策で事業を続ければ。

我々は、
一時的に地主さんに迷惑はかけます。

しかし、その後の買い戻したり、
賃借したりして、
Nさんが事業を継続できる環境は作れます。

そうすれば、事業の中からの収入で、
土地を買い戻したり出来ますし、
万が一出来なくても、
賃借したりして事業を継続すれば、
いくらかでも地主さんに
迷惑をかけた弁済が出来るではありませんか。

優先順位を考える、
とはそう言う事です。

”大きな迷惑をかけない為に、
小さな迷惑をかけて、
大きな迷惑が掛からないようにする”

こういう発想が大事なんです。

Nさん、ワタシは今から、
「たとえ話」をします。

あなたはがん患者で、
ワタシはドクターです。

ワタシがあなたに言うんです。

”あなたは初期のがんに罹患しています。
今ならポリープ程度ですから、
内視鏡で患部を切除すれば、
入院も一日。
再発の可能性も高くないでしょう。”と言います。

するとおそらくNさんは、

”そうでしたか!
それではすぐに切除をお願いします!”
っておっしゃると思うんです。

”今のままで入院するのは嫌だから、
もう少しがんが大きくなってから、
外科手術で直してください”

とは絶対におっしゃらないと思うんです。

でも、これが
”事業の病気”という観点から見ると、
Nさんは問題を先送りして、
とりあえずの体裁を繕い、
もっと病状が進行したときに
再起不能になるのがわかっていて、
処置を拒否しているのと同じだと
ワタシは思っているんです。

だから、早く次の手を打つために、
我々を使う必要があると思うんです。

急ぐのは我々ではなく、
Nさん側なんですよ。
これに気づいていただきたい。

借金問題や資金繰り問題は、
病気と同じなんです。

放置しておいても絶対に良くならない。
早めの処置が肝要なんです。」

「大家さんに許可を取らないと・・・。」とNさん。

「許可を取れそうな人物なのか、
堅物なのか・・・・ワタシにはわかりません。

地主さんの承諾を取っても
取らなくても我々は仕事が出来ます。

不動産が時間の経過を挟んで、
結果的に地主さんに戻されるか、
または、その家賃分の弁済が出来れば、
良いと考えているからです。

万が一地主さんが、それに応じず、
全てを今まで通りにしろ!と主張したなら、
ワタシなら、

”むやみに保証人になった
地主さんにだって過失はある!”

というようなことを言いながら、
説き伏せる自身はありますけどね。

全てが今まで通りで
全く無傷というわけにはいきません。

Nさんにも地主さんにも
少しばかり傷は負って頂きます。

でも、このままいけば
生死をかけた外科手術。

事前に手を施せば、
点滴を打って数日の加療入院。

どちらがNさんや地主さんにとって、
良い処方箋か?を考えなくてはいけないのです。

Nさんとの面談は約70分。
2000円頂戴しました。

年明け以降になりそうですが、
次の本格的な面談に進む事になります。

もう一件。

中京地区で工業系の事業を営む
40代の女性社長。A子さん。

友人のBさんとご一緒に
個別相談においでになりました。

このお二人は前夜にワタシのセミナーを
聴講されたうえで面談に臨まれています。

お父様が顧問で取締役。
旦那様が代表取締役会長。
A子さんが代表取締役社長という家内工業。

3億円を少し欠けるほどの売上で
借入総額は2億円を超えている状況。

こちらも既にリスケジュールを実行して数年。
それでも毎月元利返済は80万円ほど。

また不要なリース物件などにも
毎月70万円ほどの支払いを実行中。

半年ごとにリスケジュールの
更新をしている事で、
ここでも別途手数料を
吸い上げられている事は明白。

A子さんの旦那さん名義で
自宅を保有しており、
ローンの残高はあと5年ほど。

お子さんは高校生と中学生の二人。
まだお金がかかる時期。

A子さんに対して、
ワタシから提示した救済案は、
上記のNさんと同じような提案でした。

A子さんは、非常に脳の回転が早く
知的水準の高さを感じさせる女性。

前夜のセミナーや、
翌日の個別面談で我々の救済手段で、
A子さん自身の会社が
大きく資金繰り改善するメリットを
感じ取りました。

同席したBさんも、
大きく頷きながらワタシの話を聴いて下さいます。

A子さんは今すぐにでも、
我々の救済を受けたい意向をお持ちでした。

しかし・・・・
A子さんは我々の提案を
保留にせざるを得ませんでした。

A子さんは、
事業所の2億円超の負債の
連帯保証人ではないからです。

顧問であるお父様と、
会長である旦那様の同意を得ないと
コンサルテーションは受けられない、
というのです。

「そうですか。

ご家族という関係性である以上、
法律を盾に強引にA子さんが
実行する事も困難でしょう。

丁寧にご説明をされ、ワタシが現地で、
お父様やご主人に説明できる環境を
A子さんが作ってみてください。

それを作る事が出来るか
出来ないかは・・・・A子さん次第です。
頑張って下さい。」

そんなやり取りを経て、
数日・・・・・・
A子さんからワタシにメールが来ました。

匿名性を確保した以外は原文そのままです。

「おはようございます。A子です。

先日は、大変お世話になり、
心より感謝申し上げます。

さてあのあと、
父に話しましたが
実は相手にもされませんでした。

私の力不足です。

せめて経営者として
借入に対する知識を得て欲しいと、
それから、自分の置かれた状況を再認識して、
今後の判断をして欲しかったのですが、
残念ながら、私の想いは通じませんでした。

すでに一人自らの命を絶った人がいるのに、
なぜこれほどに他人事なのか、
腹の立つのを通り越して、
正直言葉にもなりません。

債務者でない自分の今後のことを
別途考えなければならないと、
思ってもいます。

一応今日1日父からの
反応を見てみますが、
おそらく難しいと思います

こういうタイムロスが
命取りになり兼ねないと
私は認識しているので、
非常に歯がゆい思いですが、
私が債務者でない以上
傍観するしかありません。

まずは、経営者として、
債務者当人として
自覚を持ってもらいたかったのですが。

本日期日なので今朝の時点での経過を
ご報告さてせ頂きました

又ご相談させて頂くことがあると思いますので
その節はどうぞよろしくお願い申し上げます。」

A子さんの想いは
お父様やご主人には
届かなかったようです。

承認や同意が得られなかった、
という事です。

一件目のNさんは、
地主さんの同意が無くても、
おそらく大きな軋轢を生まずに、
ことを進ませる事が出来たでしょう。

二件目のA子さんは、
家族の同意が無いと、
上手く進まない件だったでしょう。

でも・・・・・・
やはり周辺の人物を巻き込んで
事業を進めている以上、
周辺が団結している事で、
よりスムーズに事の解決が
はかれるケースは数多くあります。

団結していないながらも、
やはり、周辺の重要どころには、
承認や同意を得ておく必要はあるでしょう。

少しだけ、
6年前の自分の事を思い返してみました。

ワタシはかつて新潟県で
小売業の事業を商っていました。
ワタシは二代目経営者でした。

良い時もありましたが、
ほんの少しの期間だけ。

その後は長期的に低迷し、
当時の社長であった父親は疲弊していきました。

重要取引先だった隣町の会社が
民事再生法の適用を申請し、
ウチの会社は更なる低迷を強いられました。

その後父親は、体調の不調を訴え、
ワタシに社長を譲りました。

ワタシも頑張りはしましたが、
会社を浮上させるような事にはならず、
とうとう銀行への返済原資が無くなり、
新潟市の弁護士事務所の門を叩きました。

両親にも妻にも内緒にして。

破産しようと思ったんです。

当時の知識の無いワタシには
それしか思いつきませんでした。

「あまりにも子供が不憫だ・・・」
とは思いましたが、
それしかないって思っていたので
仕方がありません。

そこで、
ワタシは破産の費用が350万円かかる
と言われて破産が出来ませんでした。

「オレは・・・・破産すらできないのか。」

あまりにも世の中の非情さを感じた時に・・・・・
言い方が悪いですが、父が亡くなりました。

悲しみに暮れる、
母親がワタシに言ったんです。

「あんたはお父さんを地元の名士のまま、
あの世に送ってくれた。

もういいよ。
お父さんの会社やめていいよ。
あんたは十分頑張った」って。

その時に、ワタシは思ったんです。
”母親の同意を得た”って。

ですから、一部の方には
強い批判を受けるこの仕事についても
母親は大きな賛同と強い支援をしてくれています。

ですから、ワタシはこれまで
数多くの批判や中傷に耐える事が
出来たと思っています。

反対に・・・・・
周辺の関係者に承諾や
同意を得るって言う事は大きな力になる、
という事でもあるのです。

その達成には強い思いや
強い使命感が無いと出来ません。経験上。

大変失礼な言い方ですが、
現時点では上記のNさんやA子さんには
それが十分でなかったのかもしれません。

今後、時が経過するとともに、
周辺への説明や説得を続け、
協力者がいる環境の中で、
資金繰り改善を実行し、
その中から迷惑をかけた
対価を支払えばよいと思いますし、
それしか手立てが無いようにも思います。

事前のコンセンサスは非常に大事ではあります。

でも時には得たほうが良い場合と、
得なくても良い場合もあるのです。

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発行者:株式会社MEPたちばな総研
筆者:たちばなはじめ